コーヒーの香りがする。
目を開けるより前に、その香りが先に脳の覚醒に繋がった。
見慣れた自分の部屋だ。そこに幕之内がいる。
まだぼんやりとする頭のまま、上半身を起こした。
「あ、宮田くんおはよう・・・って、もう夕方だけどね」
いまいちハッキリしない頭と体だったが、徐々に神経一つ一つが起きてくる。
そうだ、バイト明けの俺の部屋に奇襲して、一方的に話す声を聞いてる内にだんだん・・・・・
「わりぃ、寝ちまったか・・・」
「うぅん、僕こそごめんね。コーヒー飲むでしょ?」
「あぁ・・・お前時間大丈夫なのか?仕事あるんだろ?」
「うん、これ淹れたらすぐ帰るね」
「・・・急いでんなら、俺の事は気にせず帰って良かったんだぜ・・・」
「駄目だよ!!!」
カップに注いでた手を止めて、キッとこっちを見た。
「ボク鍵の置いてあるとこ分かんないし、無防備のままの君を置いてけないよ!
襲われたらどうすんの!!」
「鍵・・・・強盗ならまだしも、男の俺をおそ・・・」
「何言ってるの、宮田くんはっ!!!」
凄い勢いで言葉を被せられた。しかも目が据わってる。何だ、いつもの幕之内と違うぞ。
「宮田くんは分かってないよ!自覚した方がいいよ!君はカッコいいんだよ!
目を奪われるんだよ!君はいつも輝いてるんだよ!そこにいるだけで華があるんだよ!
それに女の人の痴漢もいるんだよっ!!」
「そ・・・そうか・・」
いつにもまして早口に圧倒され、勢いに飲まれてしまう。
「そんなボクの宮田くんがスヤスヤ寝てたらやばいじゃないか!誰だって正気じゃいられなくなるよ!」
──────────ボクの・・って。
「まずどうしようか、体の自由を奪おうか、口はどうしようか、かわいい声出させたいから
そのままにするかとか、服はどうしようかジックリ脱がそうか、いや引き千切ろうかとか、
どこから攻めようかとかっっ!!」
「・・・お、おい・・・まく・・・」
手に持つカップはいつの間にか置かれ、それに代わって握りこぶしが出来てた。しかもやたら目が熱い。
「勿論宮田くんは容易く屈しないよ?それをどう手懐けるか、どう攻略するか、如何にピ───っ!!」
──────────一一体どうした、幕之内。
「嫌がる宮田くんに猫耳や鈴つけて画像に収めたり、白衣着せていかがわしい事したり!
宮田くんはきっと白衣も似合うんだろうなぁ。それから全身にキスマーク付けて写真撮って脅したり。あと・・・」
──────────とりあえず、ナースじゃなくて良かったぜ。
「で、どうする?どうしたい?宮田くんてばっ!あ、たまには趣向凝らして外でって・・それはやっぱり
流石に恥ずかしいかな。あ、だったらたまには宮田くんが僕の上に・・・なんてね。うわぁ、恥ずかしいなぁ、
えへへ」
お前そんな趣味あったのかとか、こいつの方が危ねぇ、とか思うがとりあえず・・・・
「・・・・・帰れ」
end