待ち合わせの場所に急ぐ。
約束の時間より15分も遅れてる。
一応遅れる旨を電話で知らせたけど。
1分でも1秒でも早く会いたい。遅れた時間は取り戻せない。
その分一緒に居られる時間が減ってしまう。


──────────早く早く!!

信号で引っかかりイライラする。
信号が変わるのがやけに遅く感じる。
走行車に理不尽な怒りをぶつけてしまう。

──────────まだかな!

信号が変わり、目をすばやく走らせる。
突っ込んで来る車が無いと確認すると走り出した。
こっちが青でもちゃんと確認しないと危険なのは、誰もが知っている事だ。

待ち合わせ場所に彼はいた。
ホッとする。

──────────怒ってないかな。


乱れた息を整えつつ近づく。
そして気づく。誰かと対話してる。
相手は女性で何やら嬉しそうに彼に話掛けてる。


──────────誰?

心の底がどんよりする。
ファンのコだろうか、と考えつつゆっくり歩み寄る。
握り拳に力が加わる。
顔が険しくなるのが自分でも分かる。

大きく深呼吸する。

「宮田くん、お待たせ!!」


上手く笑顔が出来たと思う。

二人の視線がパッとボクに向けられる。

「あぁ、幕之内か。遅かったな」

どこか安堵したように言う。

「うん、仕事が長引いっちゃってごめんね。それで、この人は・・・・?」
「あぁ、実は・・・・」

宮田くんの話に被せるように女の人は身を乗り出して話し出した。

「待ち合わせの人ですね!実は私も待ち合わせしてるんですけど、中々来なくて。
それでお互い待ってる間、時間つぶしにお話し ようかと思って!」

ボクと宮田くんを交互に見ながら話す。ほとんど宮田くんを見ながらだけど。

胸のモヤモヤが黒く重くなりながら、静かに沈んでく。

「私の相手も女なんですよ。これも何かの縁ですし良かったら今日一緒に・・・・」
「ごめんなさい、ボク達これから他の人と合流するから。それじゃ!行こう、宮田くん!!」

彼女の会話を遮り、彼の腕を掴んで歩き出す。

「あ、あぁ・・・・」

ちょっと面食らったような返事だったけど、そのまま歩き出してくれた。
勿論誰かと合流なんて嘘だ。
しばらくそのまま歩く。腕を掴む手に力が入る。彼の筋肉が伝わる。

──────────冗談じゃない。何が縁だ。

「幕之内?」

名前を呼ばれ足を止める。

──────────ボクのなんだ。

不快な感情は嫉妬かヤキモチか・・・・独占欲か。
自分が得られる時間を他の誰かに盗られるなんて。
勿論遅れた自分が悪いのは分かってる。
でも待ってる間はボクのコト考えてくれてたかもしれないじゃないか。
ボクはいつだって宮田くんのコト考えてるのに。
こんなに好きなのに。
好きなのに。

彼と出会うまでこんな気持ちになったコト無かった。知らなかった。でも生まれてしまった。


こんなにも狂わせられるのか、と自嘲気味に笑う。


大きく深呼吸する。
きっと今、嫌な顔に違いない。

「どうした、幕之内?」

訝しがるように尋ねる。
顔の筋肉をほぐすようにもう一度深呼吸する。
笑顔だ笑顔。

そして彼に向き合う。



「宮田くん、好きだよ」




end



『歩き出す一つの感情』